

仕事やお出かけから帰って来て、ご自宅が目に入ったとき。
あるいは来客者やご近所の方、通りすがりの人など。
外から見たときに、お家の印象を決めるものは何でしょうか?
それは建物本体の美観だけではありません。
門扉や塀、擁壁などは、通りから見たときに一番に目に飛び込んでくるものであり、
お家の第一印象に大きく影響してきます。

もし家屋が外壁塗装をしたばかりでピカピカでも、
塀に苔が生えていたり、門扉にサビや塗装剥がれが目立っていたら、台無しです。


お住まいの外壁塗装の際に、塀やカーポートなどの塗装をしない部分にも
ご希望に応じて高圧洗浄を行うこともできますが
(高圧洗浄をしても塀などの設備や周囲に問題が起こらないことが前提になります)
「せっかく建物を塗装して新築のようにピカピカにするなら、
門や塀も同時に塗り替えてピカピカにしたい!」
とご希望される方も多いです。
この記事ではそんな塀や擁壁の塗装について解説してまいりますので、ぜひご覧ください。
目 次
1 なぜ塀や擁壁へ塗装をしたほうがよいのか
1-1 エフロレッセンス(白華現象)とは
塀や擁壁、門扉は、屋根や外壁と同じく、常に風雨や紫外線などに曝され、劣化していきます。
塀や擁壁の材料であるモルタルやコンクリートは水酸化カルシウムを含んでおり、雨が染み込むと溶け出します。
溶けだした水酸化カルシウムが表面に付着してしまう現象を 「エフロレッセンス(白華現象)」 と呼びます。
強度的には問題ありませんが、白い粉上の汚れがこびりついた見た目となり、外観が悪くなってしまいます。
【エフロレッセンス(白華現象)の起こるメカニズム】

水がモルタルやコンクリート内部に浸透。内部の水酸化カルシウムを溶解。
水酸化カルシウムが溶け込んだ水が蒸発するとき、空気中の炭酸ガスと反応。表面に炭酸カリウムが析出。
炭酸カリウムが固着し、白く粉をふいたような見た目になる。
エフロレッセンスが起こるメカニズムを知らず、
塗装を施していない、あるいは塗装の劣化した塀が白っぽく汚れてきたから掃除をしよう!
と水を使って大掃除して、
「塀が乾いたらまた白い粉がふいていた…」
「あんなに擦って掃除したのに、なぜ?」
なんてイタチごっこに陥ってしまっていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
エフロレッセンスをを防ぐには、塀や擁壁に雨水を染み込ませないようにすればよく、
つまり塀や擁壁に塗装を施せば、エフロレッセンスを防ぐことができます。
1-2 その他の劣化について
塀や擁壁に塗装をしたほうがいいとおすすめするのは、エフロレッセンスだけではありません。
塗装をしていないと、雨水は構造物の中に浸透し、乾くまでに時間がかかります。
水に濡れたままの時間が長くなれば、汚れが付着しやすくなります。
その結果、苔、藻、カビも生えやすくなります。
また水が染み込んだまま寒さで凍り付けば、水は氷ると膨張する性質があるため、内部が膨らみ、ひび割れが起こってきます。
これらは美観を悪くするだけでなく、強度も損ねる恐れがあります。
塀や擁壁の塗装は、これらの劣化を防ぐことが出来ます。
2 塀や擁壁塗装を依頼する業者選びの注意点
「塀や門扉を塗装しよう!」
とお決めになられた場合に、業者選びで絶対に注意していただきたい点があります。
それは、建材に対して適切な塗料を使用する業者を選ぶ、ということです。
ふだん皆さんが使う筆記具も、どこに書くかによって、鉛筆、水性ボールペン、油性ボールペン、油性マジックなどといったように、使い分けておられると思います。
ペットボトルやプラスチックなどの容器に、水性ボールペンでは書き込むことができません。
同じように塗料も、建造物の材質に応じて適切なものを選ばなければなりません。
もし適合しない塗料で塗装した場合、塗料が剥がれてきてしまうなど、耐用年数が短くなってしまいます。

あなたのお家の塀や門扉は、どのような建材をお使いでしょうか?
コンクリートブロックを高く積んだものだったり、低い部分はコンクリートブロックでその上に金属製の柵が立っているというものだったり、色々あると思います。
金属製の柵と一口にいっても、その金属は何なのか。アルミ、ステンレス、鉄など、色々あります。
安さだけを重視して業者選びをしてしまうと、
その業者が安い理由は経費節減のために、コンクリートも金属も木部も全て同じ一種類の塗料で済ませるからだった、ということがあります。
確かに、いろんな材質に使用できる万能塗料というものも中にはあります。
しかし塗料の内、下塗りに使用するシーラーは、必ず建材に適合したものを使用する必要があります。
見積もりの際には塗料について、色だけでなく、塗る対象の材質に合っているかどうかを必ず確認していただき、
適切な塗料を提案する業者の中から依頼する業者をお選びください。
3 塀や擁壁の塗装には、「透湿性」 の高い塗料を
塀や擁壁には 「透湿性」 の高い塗料を使う必要があります。
「透湿性」 とは、水蒸気を外に出す性能のことです。
湿気を逃がす性質です、と言ったほうが通じやすいかもしれませんね。
なぜ透湿性の高い塗料を使用する必要があるのでしょうか。
塀によく使われるブロック、また擁壁の材料となるコンクリートは、水が染み込みやすいです。

染み込んだ水は水蒸気になると膨張します。
膨張後の水蒸気の体積は、元の水の体積とくらべると、なんと 1600~1700倍 にもなります。
そのため、水蒸気を外に逃がせない、つまり透湿性の低い塗料を使用してしまうと、膨れや剥がれが起きてしまいます。
必ず塗料は透湿性の高いものを使用するようにしてください。
4 塀や擁壁は塗り替えで大きなイメージチェンジもできる

塀や外壁に塗装をするなら、
元の塀や外壁とまったく違った風合いにイメージチェンジをすることができます。
色を変えるだけではありません。
ジョリパットを用いれば、荒壁風、サンド調など、いろんな素材感を演出することもできます。
また塗装の際のコテ跡で、模様づけすることもできます。
和風な掻き落とし、扇形から、欧風のスタイルまで自由自在です。
逆に
「コンクリート打ち放しの無機質な雰囲気が好きだったから、塗装でその雰囲気を壊したくない」
とお考えの方もいらっしゃると思いますが、大丈夫!
コンクリート描画工法があります。
コンクリート「打ち放し」という名前から、コンクリートをただ打っただけで、塗装はしていないという誤解をまねくことが多いのですが、
上でも述べてきたように、コンクリートをそのままにすると問題があります。
そのため多くの場合、シラン系撥水剤が塗布されているのです。
シラン系撥水剤がコンクリートの塀を雨水から保護しますが、その効果は数年で切れてしまいます。
すると、コンクリートは水が染み込みやすいため、どんどんと劣化してしまいます。
コンクリート描画工法とは、特殊な塗り方をすることでコンクリートの模様を復元する工法です。
塗り終わった上からコーティング剤を塗布し、長持ちさせます。
コンクリート描画工法は、コンクリート外壁(RC外壁)の他にも、ブロック塀にも施工できます。

5 塀塗装の流れ
塀の塗装を行うときの流れをご紹介します。
高圧洗浄・・・塀にこびりついている汚れ・苔・藻などをきれいに落とします。
養生・・・塗料が他の部分に着かないよう、ビニールシート等で覆います。
下塗り・・・シーラーやプライマーと呼ばれる下塗り専用の塗料を塗ります。仕上げ用の塗料と建材とをしっかり密着させる ”接着剤” の役割を果たします。
中塗り・上塗り・・・仕上げ用の塗料を塗ります。
まとめ
以上、お家の印象を大きく左右する塀や擁壁の塗装についてご案内してきました。
いかがでしたでしょうか?
しょっちゅう掃除をしているのに、すぐに苔や藻が生えてきてしまう。
カビが生えてしまって、不潔に感じるし健康にも心配。
家の外壁塗装のついでに新しい見た目にしたい。
家の雰囲気を変えたい。
そんなときには、塀、擁壁、門扉の塗装をご検討してみてください。
塗装する場合には、材質にあった塗料であるかに気をつけて業者選びをしてください。
また必ず透湿性の高い塗料をお選びください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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「著者情報」
関裕一
東京都足立区出身 1級外壁・屋根調査士・ドローンパイロット
サンセイホーム(株式会社三誠ホームサービス) 最高技術責任者
18歳から塗装職人として2.250件以上の施工に携わる。
塗装業界の歪んだ構造を塗り替えるべく、奇跡の「新時代塗装」倶楽部を主催している。
お家を長く保つアドバイスを、分かりやすくお伝えします。
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